インタープレイを“き”かせてくれ

ジャズ好きな、そこそこ年のいったライターのブログです。周囲の誰よりも早く、コレステロールの薬飲み始めました。

岩手県 花巻 宮沢賢治について

東北出張がてらの旅行に出掛けていた僕は、宮城から北上し、仙台→松島→女川→花巻へと移動した。

 

花巻での目的はもちろん宮沢賢治。2016年は、賢治生誕120周年。

 

なにがしか豪勢にイベントでもあるのだろうと駅を降り立つと、

そこには人っ子1人いない「THE 田舎の駅前広場」が広がっていた。

 

時間は16時くらいだったろうか、あまりにも何もなく、店も開いていなく、ゾンビ映画の冒頭20分のようなゴーストタウン。

 

昼から何も食べていなかったので、岩手名物蕎麦でもいただこうかと思っていたが、とにかく店が休み。

 

腹を空かして彷徨っていると「ブッシュ」を見つけた。

 

「ブッシュ」とは、藪屋総本店のこと。

 

宮沢賢治がよく訪れたそば屋のことで、ここの天ぷらそばとサイダーをよく好んだそう。

 

今も賢治セットという、天ぷらそばと瓶の三ツ矢サイダーがセットになったものがある。

早速それを注文した。

 

そばが好きなので、有名店や各所でそばを良く食べる。

 

宮沢賢治ゆかりの地であるからして、いかに高級なそばかと思ったら、サイダーとセットで800円だったと思う。

 

味もよくできたうまいそばという感じで、気取ってもいなければ、変わってもいない。

モミジおろしが付いている以外は、カツオの効いたいいそばであった。

 

そばを噛みながらサイダーを飲むと、不覚にも涙が溢れてきた。

 

宮沢賢治は、この何もない、人も多くはいない土地で、たまの贅沢といえば天ぷらそばを食い、酒ではなくサイダーを飲んでいた。

 

そして家に帰れば、文机に向かって、こども達に夢を与えるような“素敵な”お話を考えては原稿に起こす。

朝になれば教鞭をとり、夜になればまたペンを走らせる。

 

酒をふんだんに飲み、東京に集まる古今東西のうまいものを食らう、自分の発想のいかにチンケで貧相なことか。

 

花巻は、決して裕福な土地ではない。奥州藤原氏の時代はどうであったか知らんが、近代ではいかにもな田舎町で、自然のみが溢れているような土地だ。

 

そのただ中で、宇宙を夢見て、幻想を書き出す1人の漢がいたなど、到底想像できない。

 

才能、ではなく、心の問題なんだろう。

 

そばつゆを空けて、サイダーを流し込むころには、温かいそばを手繰ったせいか、鼻をすするのが止まらなかった。

 

店を後にすると、子供の一団が店内に入っていった。

部活の帰りに、引率の先生と食事をするらしい。

 

輝くような目がキラキラと光り、ジョバンニとカムパネルラが旅する銀河を見たような気がした。

 

一生懸命やりなさいと、そう言われたような気がして、少し背筋を伸ばしながら、また人気の無い街を、駅へと向かって行った。