インタープレイを“き”かせてくれ

ジャズ好きな、そこそこ年のいったライターのブログです。周囲の誰よりも早く、コレステロールの薬飲み始めました。

若くして亡くなった、良いトランペッターについて

最近、ずいぶんとクリフォードブラウンにはまっている。

 

1950年代に活躍したトランペッターで、当時のミュージシャン・リスナー共に大きな人気を得ていた人だ。

 

残念ながら20代前半で、交通事故という不慮の死を遂げた彼は、活動期間が至って短い人であった。

 

それでもなお、現在まで雑誌やウェブコンテンツで特集され、彼の死を悼んで作られた名バラード「I Remember Cliford(作:ベニーゴルソン)」が日夜演奏されていることを考えても、その腕前が惜しまれる。

 

クリフォードブラウンのエピソードで一番好きなのは、音楽活動に迷ったソニーロリンズを音楽界に引き戻したことだ。

 

今やレジェンド級のミュージシャンであるソニーロリンズは、過去数回音楽活動を休止している。

 

いずれも、自分の活動に迷ったという理由らしいが、恐らくクリフォードブラウンに引き戻されたというからには、ドラッグや音楽界にビビったのが原因だろう。

 

当時のジャズ界は、結構ダーティな世界で、ドラッグ中毒やアルコール依存によるいざこざが多かったらしい。

 

事実、オーバードーズで亡くなるミュージシャンや、痴情のもつれで撃ち殺される者。酒の影響で奇妙な演奏をする様子なども、記録として残っている。

 

そんな中で、クリフォードブラウンは大学出でドラッグもやらず、アルコール中毒でもない。クリーンなミュージシャンとして世に出てきた。

 

酩酊していない彼の演奏は、非常にクリエイティブであり、周りの音を聞き逃さず、インタープレイのしやすい音楽だった。そのうち、周囲のメンバーは彼の演奏やリズムパターンに合わせられる、同じようにクリーンなミュージシャンに絞られていく。

(確かに、ドラッグの恍惚状態や、酒に酔っている状態で、周囲の演奏に合わせられる訳はないな)

 

マックスローチとのタッグは特に有名。マックスローチのリーダーアルバム「Drums Unlimited」の、ドラムのみによるソロ演奏によって分かるように、非常に独特の手数に、発想力を兼ね備えている。

 

そんな2人が手を組めば、なんだか新しい演奏ができそうでしょ。

 

クリフォードブラウンの快進撃とも言える演奏を聞いたロリンズは、再び音楽の世界に戻ることを決意し、彼のバンドメンバーとなった。

ロリンズリーダー名義である「Plus 4」にて、その演奏を聞くことができる。

 

ハツラツとした、これからいくぜ! という活気にみちたバンドだが、収録の半年後にクリフォードブラウンが、バンドメンバーのピアニストと、その奥さんと共に事故死する。

 

ロリンズは、その後も音楽業界に留まり続け、コンテンポラリーレコードの人気ミュージシャンを集めたバンドのリーダーになったり、現在までの歴史をひもとけば、その活躍の具合は押して量るべしだ。

 

マイルスデイビスもまた、クリフォードブラウンの演奏を聞いたことで、ドラッグとの決別を決意。実家の所有する農場にこもって、地力でドラッグを辞めたそうだ。

 

例え短い生涯であっても、大きな影響を残し、死んでいったミュージシャン。

 

クリフォードブラウンに影響を受けなかったら、ロリンズやマイルスは、ドラッグにもっと深くのめり込み、ジャズの歴史は今よりも遅れていたかもしれない。

 

今もあなたの功績が連綿と続き、僕たちの耳にも届いているよ。と、話しかけたくなるが、いつものようにクールな演奏だけを残して、耳から消えていく。

 

その余韻が、なんとも切ない。